──現場力を決めるのは「腕前」ではなく「準備力」である──
建設現場ではよく、
「あいつは腕はいいけど段取りが悪い」
「段取りの良い職人は現場を回せる」
「仕事は準備で8割決まる」
といった言葉が交わされます。
実際、
建設業において “段取り力はスキルより重要” と言っても過言ではありません。
どれだけ技術が高くても、
・段取りが遅い
・必要な材料が揃っていない
・先読みができない
・作業順序が悪い
こうした状態では成果は出せず、
逆に現場の生産性を下げてしまいます。
では、どうすれば段取り力を育てられるのか？
本コラムでは、段取り力の本質と育成方法を具体的に解説します。
1. なぜ“段取り力”はスキルより重要なのか？
段取り力は、
単なる「準備」ではありません。
段取り力とは、
“作業の全体像を理解し、最適な進め方を組み立てる力”
です。
段取り力が高い職人は、
常に未来を見ながら動いています。
●今何をし、次に何が必要か
●誰とどの順番で仕事をするか
●どんなリスクがあるか
●材料・道具は足りているか
●他職との工程はどう重なるか
これらを瞬時に判断するので、
・無駄な時間が減る
・現場の停滞がなくなる
・トラブルが事前に防げる
・全体の安全性が高まる
・品質が安定する
といった“現場全体の成果”にまで影響します。
つまり段取り力は、
現場全体の生産性を左右する“経営スキル” とも言えます。
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2. 段取り力は“経験年数”では育たない
多くの企業が勘違いしているのがここです。
「経験を積めば自然と段取り力が身につくだろう」
これは誤解です。
実際には、
・10年やっても段取りが苦手な人
・若くても段取りの上手い人
どちらも存在します。
段取り力は、
経験の“量”より、経験の“質”で育つ能力 だからです。
特に、
・自分で考える機会がない
・指示待ちで動いている
・なぜその順番なのか説明されていない
こうした環境では、
何年経っても段取り力は育ちません。
だからこそ、
会社として意図的に育成する仕組みが必要なのです。
3. 段取り力を構成する“3つの要素”
段取り力は次の3つで構成されています。
① 予測力（先を読む力）
材料・工程・リスク・天気・人員など
あらゆる要素を先読みする能力。
例）
「明日は雨だから先に外仕事を進めよう」
「午後に他職が入るから午前中に片付けておこう」
② 判断力（優先順位をつける力）
今の状況で何を最優先すべきか判断する力。
例）
「材料の搬入を先にしないと全体が滞る」
「先に墨出しが終わらないと他職が動けない」
③ 段取り表現力（チームに共有する力）
段取りは“個人で完結しない”。
仲間に共有し、合意形成する能力が必要です。
例）
「今日はこの順番でやるからよろしく」
「午前中はここ、午後はこっちに移動します」
この3つが揃うと、
段取り力は一気に高まります。
4. 段取り力を育てるための“具体的な5つの施策”
企業が段取り力を育てるために
すぐに実践できる方法を紹介します。
① 作業前に必ず“今日の段取り共有”を行う
現場開始前に5分でできる効果的な方法。
・今日の工程
・優先順位
・他職との兼ね合い
・必要な材料
・リスク箇所
これをチーム全体で共有する。
共有があると
若手は「段取りの考え方」を学べます。
② 若手に“小さな段取り”を任せる
最初から大きな段取りは難しいため、
・道具の準備
・材料の拾い出し
・作業順序の提案
・翌日の準備
など、
“小さな段取り”から任せることが大切。
成功体験を積むほど
段取り力は加速度的に伸びます。
③ 段取りの“理由説明”を必ずセットにする
段取り力が育たない最大の原因は、
「なぜその順番なのか」を教えていないこと。
良い段取りは「理由」がある。
・先にこれをやると効率が良い
・この順番だと仕上がりが綺麗
・この材料は早めに確保する必要がある
理由を理解すると、
若手は“自分で考える力”が身につきます。
④ 完了後の“振り返り”で改善点を共有する
段取りは振り返ることで伸びます。
・どこがスムーズだったか
・どこで詰まったか
・改善できるポイント
・明日の段取りにつながる気づき
これをチームで共有することで、
段取り力は仕組みとして蓄積します。
⑤ 中堅・ベテランの“段取り思考”を言語化する
ベテラン職人は、
驚くほど高い段取り能力を持っています。
ただし、
多くは“感覚的”に動いており、
その思考が言語化されていない。
・どこを見ているのか
・どんな順番で考えるのか
・リスクをどう予測しているのか
これを“言葉”として若手に伝えることで
段取り力が継承されます。
5. 段取り力は“会社の文化”にすると最強になる
段取り力は、
個人のスキルではありません。
組織の文化にすると
現場の生産性は劇的に上がります。
✔ 段取り共有
✔ 段取り会議
✔ 段取りの見える化
✔ 段取りを褒める文化
✔ 段取りマニュアル
✔ 段取り教育制度
これらを会社として取り入れると、
“段取りが良い職人しか育たない組織”ができます。
これは圧倒的な会社の強みになります。
6. 結論：段取り力は“現場力そのもの”である
段取り力とは単なる準備ではなく、
・先を読む力
・判断力
・チームを動かす力
・トラブルを防ぐ力
・生産性を上げる力
これらをすべて含む
現場力の核 です。
段取り力が高い職人が増えるほど、
現場はスムーズに回り、
安全性と品質が上がり、
会社の利益も大きく改善します。
スキルより重要なのは、
“優れた段取りができる人材を育てること”。
段取り力を育てることは、
会社の未来を育てることに等しいのです。
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