
建設業界の採用といえば、これまで「求人を出して応募を待つ」という方法が中心でした。
求人サイトに募集を掲載する。ハローワークに求人を出す。自社のホームページに採用情報を載せる。
そして、それを見た求職者から応募が入り、面接をして採用する。
長い間、この方法が採用活動の基本でした。
しかし今、その常識が大きく変わろうとしています。
「求人を出しても応募が来ない」
そんな状況が当たり前になりつつある建設業界では、求人を掲載して待つだけではなく、企業側から必要な人材を「探す」という考え方が重要になってきています。
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なぜ「待つ採用」が難しくなったのか
最大の理由は、建設業界の慢性的な人手不足です。
特に経験を持つ職人や若手人材を採用したい企業は多く、一人の求職者を複数の企業が取り合うような状況も珍しくありません。
それでも企業側は、
「求人を出しておけば誰か見るだろう」
「条件を良くすれば応募が来るだろう」
と考えてしまいがちです。
しかし、そもそも仕事を探している人が少なければ、どれだけ魅力的な求人を作っても見てもらえる人数には限界があります。
つまり、求人広告の内容以前に、「今まさに求人を探している人だけを対象にしている」こと自体が採用の限界になっているのです。
優秀な職人ほど求人を見ていない?
企業が最も採用したいのは、どんな人でしょうか。
「経験がある」
「資格を持っている」
「一人で現場を任せられる」
「職長経験がある」
「若くてこれから長く働いてくれる」
こうした人材を求める会社は多いでしょう。
しかし、ここに一つの矛盾があります。
企業から求められるような優秀な職人ほど、現在もどこかの会社で働いている可能性が高いということです。
毎日仕事があり、それなりに給与をもらっている。
「今すぐ会社を辞めたい」と考えているわけでもない。
そうした職人は、そもそも求人サイトを頻繁に見ていないかもしれません。
どれだけ魅力的な求人広告を掲載しても、見てもらえなければ存在していないのと同じです。
ここに「待つ採用」の大きな弱点があります。
「転職したい人」だけが採用対象ではない
職人の中には、積極的に転職活動をしていなくても、
「今より給料が上がるなら興味がある」
「もっと自分を評価してくれる会社があるなら話を聞いてみたい」
「休みが増えるなら転職を考えてもいい」
「自分の経験が他社ではどれくらい評価されるのか知りたい」
と考えている人もいます。
こうした人たちは、一般的に「潜在転職層」と呼ばれます。
今すぐ転職したいわけではない。
しかし、条件やタイミングによっては転職する可能性がある。
これからの建設業採用で重要になるのは、この層です。
「今、仕事を探しています」という人が現れるのを待つのではなく、企業側から潜在層へアプローチする。
採用対象そのものを広げる必要があります。
採用は「広告」から「マッチング」へ
これまでの求人は、企業が不特定多数に向けて情報を発信する「広告」に近いものでした。
例えば、
「電気工事士募集」
「経験者優遇」
「月給35万円以上」
と求人を掲載し、それに興味を持った人から応募してもらう方法です。
一方、「探す採用」では考え方が逆になります。
例えば企業が、
「電気工事経験5年以上」
「第二種電気工事士保有」
「職長経験あり」
「大阪府在住」
「希望給与○万円以上」
といった条件から、自社が求めている人材を探します。
そして、
「あなたの経験を当社ではこれくらい評価できます」
「一度話をしてみませんか」
と企業側から直接アプローチする。
つまり、求人を広く見せる採用から、必要な人材と直接つながる採用へ変わっていくということです。
「何ができる職人なのか」が重要になる
企業側から人材を探すようになると、これまで以上に重要になるものがあります。
それが職人の「スキル」です。
建設業界では、同じ「経験10年」でも能力は大きく違います。
一人で作業できるのか。
図面を読めるのか。
資格を持っているのか。
職長として現場をまとめられるのか。
若手を教育できるのか。
顧客との打ち合わせまでできるのか。
こうした能力が見えるようになれば、企業側も「自社が本当に欲しい人材」を探しやすくなります。
職人側にとっても、自分の経験や技術を正当に評価してくれる会社と出会いやすくなります。
年齢や経験年数だけではなく、「何ができるのか」で人材と企業がつながる採用が広がれば、建設業界の採用そのものが大きく変わる可能性があります。
「探す採用」は企業側にも準備が必要
ただし、企業側から声をかければ簡単に採用できるわけではありません。
むしろ「探す採用」になるほど、会社自身も比較されます。
例えば、ある職人に複数の企業から声がかかったとします。
A社は、
「経験者募集。月給35万円です」
だけ。
B社は、
「あなたの○○の経験を評価しています。当社ではそのスキルなら月給○万円からスタートし、職長になれば○万円を目指せます。資格取得費用も会社が負担します」
と伝えてきた。
どちらの会社に興味を持つでしょうか。
大切なのは、「人が欲しい」という会社側の都合ではありません。
「なぜ、あなたに来てほしいのか」を伝えることです。
これからの採用では、求職者が企業を選ぶだけでなく、企業も人材を探し、お互いが選び合う関係になっていくでしょう。
求人広告がなくなるわけではない
もちろん、「待つ採用」が不要になるわけではありません。
求人サイト、ハローワーク、自社採用サイト、SNSなどを活用し、広く人材を募集することは今後も重要です。
ただし、それだけに頼らないということです。
求人を掲載して応募を待つ「待つ採用」。
SNSやホームページなどを通じて会社を知ってもらう「育てる採用」。
そして企業側から必要な人材へアプローチする「探す採用」。
これらを組み合わせることが、これからの建設業採用では重要になってくるでしょう。
人が来るのを待つ会社から、人材を探しに行く会社へ
建設業界の人手不足が続く中、採用競争は今後も厳しくなることが予想されます。
「求人を出したから、あとは応募を待とう」
それだけでは、必要な人材と出会える確率はますます低くなっていくでしょう。
これから必要なのは、
「誰か応募してくれないか」ではなく、「自社にはどんな人材が必要なのか」を明確にすること。
そして、その条件に合う人材を企業側から探し、直接自社の魅力を伝えていくことです。
求人を掲載して、人が来るのを待つ。
そんな採用から、
必要な人材を見つけ、企業側から会いにいく採用へ。
建設業の採用は今、「待つ時代」から「探す時代」へ大きく変わろうとしています。
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