
「今の会社を辞めるつもりはない」
「人間関係にも特に不満はない」
「給料もそこそこ貰えているから、転職は考えていない」
そう思っている職人さんも多いのではないでしょうか。
もちろん、無理に転職する必要はありません。
長く働いてきた会社には信頼関係がありますし、仕事内容や人間関係にも慣れています。安定した環境で働き続けることも立派な選択です。
しかし、転職する気がなくても、一度は知っておいてほしいことがあります。
それが、
「今の自分は、建設業界でどれくらいの価値があるのか」
ということです。
自分の市場価値を知ることと、転職することは別の話です。
むしろ今の会社で働き続けるためにも、自分の価値を客観的に知っておくことには大きな意味があります。
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今の給料が「自分の価値」とは限らない
毎月30万円の給料をもらっていると、
「自分の価値は月給30万円くらいなんだろう」
と思ってしまうかもしれません。
しかし、それは必ずしも正しいとは限りません。
給与は会社によって違います。
会社の規模。
利益率。
元請けか下請けか。
地域。
評価制度。
給与体系。
経営者の考え方。
さまざまな要素によって決まります。
つまり、現在の給与は、
「今の会社があなたに払っている金額」
であって、
「世の中があなたに付ける金額」
とは限らないのです。
同じ技術を持っていても、会社が変われば評価が大きく変わることがあります。
だからこそ、自分の価値を今の会社の給与だけで判断しないことが大切です。
職人の価値は「職歴○年」だけでは決まらない
例えば、
「電気工事歴10年」
「防水工歴15年」
「足場職人歴8年」
という経歴があったとします。
もちろん経験年数は重要です。
しかし、本当の市場価値を考えるなら、それだけでは足りません。
どんな工事を経験してきたのか。
一人でどこまで施工できるのか。
図面を読めるのか。
資格を持っているのか。
職長経験はあるのか。
材料や人員の段取りができるのか。
元請けと打ち合わせできるのか。
後輩を育てられるのか。
安全管理まで任せられるのか。
同じ経験10年でも、できることによって職人としての価値は変わります。
これから重要になるのは、
「何年働いたか」ではなく、「何ができるのか」を自分自身で把握することです。
他社の求人を見るだけでも分かることがある
自分の市場価値を知る方法は、転職活動だけではありません。
例えば、自分と同じ職種の求人を見てみる。
同じ地域では、どれくらいの給与で募集しているのか。
どんな資格が評価されているのか。
職長経験者はいくらなのか。
どんな技術を持つ人が求められているのか。
これを見るだけでも、さまざまなことが分かります。
例えば、
「第二種電気工事士を取れば資格手当が付く会社が多いな」
「職長経験があると月給40万円以上の求人が増えるな」
「施工だけでなく現場管理までできる人は評価が高いな」
といったことです。
そうすると、
「次に何を身につければ、自分の価値が上がるのか」
が見えてきます。
市場価値を知ることは、転職先を探すためだけではありません。
自分の次の目標を決めるためにも役立つのです。
自分では「普通」だと思っている技術が評価されることもある
長く同じ会社で働いている職人ほど、自分の技術を客観的に評価する機会が少なくなります。
毎日やっている仕事なので、
「これくらいできて普通やろ」
と思っていることもあります。
しかし、別の会社から見ると、それが貴重な技術かもしれません。
大型現場の経験が豊富。
特殊な工法を経験している。
特定の資格を持っている。
若手を何人も育ててきた。
職長として何十人もの現場をまとめてきた。
本人にとっては当たり前でも、採用する企業からすると、
「ぜひ欲しい人材」
ということがあります。
腕のいい職人ほど、自分の技術を過小評価しているケースもあるのです。
逆に「自分はできる」と思っていても市場では違うこともある
反対のケースもあります。
「俺は20年やっているから、どこへ行っても通用する」
と思っていても、実際に求人を見てみると、
持っていない資格が求められている。
新しい工法への対応が必要。
施工だけでなく管理能力まで求められている。
ということもあります。
これも市場価値を知る大きなメリットです。
現在地が分かれば、足りないものも分かります。
「この資格を取っておこう」
「図面をもっと勉強しよう」
「職長を経験しておこう」
「若手を教えられるようになろう」
と考えられます。
市場価値を知ることは、自信を持つためだけではありません。
自分に足りないものを知るためでもあるのです。
転職するかどうかは「知ってから」決めればいい
市場価値を調べることに抵抗を感じる人もいるかもしれません。
「他社の求人を見るのは、今の会社を裏切るような気がする」
「転職する気もないのに調べる必要があるのか」
しかし、他社の条件を知ることと会社を辞めることはまったく別です。
例えば車を売る予定がなくても、
「今、自分の車はいくらくらいなんだろう」
と相場を調べることがあります。
家を売る予定がなくても、近所の不動産価格が気になることもあります。
仕事も同じです。
自分の技術や経験に、現在どれくらいの価値があるのかを知っておく。
そのうえで、
「やっぱり今の会社がいい」
と思えば、そのまま働けばいいのです。
むしろ他社と比較したことで、
「うちの会社、結構待遇いいんやな」
と気づくこともあります。
会社に残る判断にも市場価値は役立つ
市場価値を知ることは、転職だけでなく「残る」という判断にも役立ちます。
例えば他社の求人を見て、
自分と同程度の経験者が月給35万円~40万円で募集されている。
自分も同じくらいの給与をもらっている。
休日も今の会社の方が多い。
人間関係も悪くない。
そう分かれば、
「今の会社で頑張ろう」
という判断に自信を持てます。
逆に、自分のスキルが他社ではもっと高く評価されていると分かれば、
今の会社で昇給について相談する。
新しい役割に挑戦する。
資格取得を会社に相談する。
それでも評価が変わらなければ転職を検討する。
という選択もできます。
つまり市場価値を知ることで、感情ではなく情報をもとにキャリアを考えられるようになります。
5年後も同じ価値とは限らない
もう一つ忘れてはいけないのが、市場価値は変わるということです。
建設業界も変化しています。
人手不足。
高齢化。
働き方改革。
外国人材。
建設DX。
新しい施工技術。
資格制度。
会社が職人に求める能力も少しずつ変わっていきます。
現在高く評価されている技術が、10年後も同じように評価されるとは限りません。
反対に、
現場管理。
若手教育。
安全管理。
デジタルツールへの対応。
複数の業務をこなせる能力。
こうしたスキルの価値が高まる可能性もあります。
だからこそ、自分の市場価値は一度確認して終わりではなく、定期的に確認することが大切です。
「会社に評価される職人」から「市場に評価される職人」へ
これまで職人の評価は、所属している会社の中だけで決まることが多かったのではないでしょうか。
社長や上司が、
「あいつは仕事ができる」
と評価する。
もちろん、それも大切です。
しかし、これからはもう一つ、
「建設業界全体から見て、自分にはどれくらいの価値があるのか」
という視点を持ってもいいのではないでしょうか。
資格。
経験。
技術。
職長能力。
教育力。
段取り力。
これまで積み上げてきたものを一度整理してみる。
そして、
「今の自分ならどれくらい評価されるのか」
を知ってみる。
転職する必要はありません。
今の会社が好きなら、そのまま働けばいい。
ただし、
「他を知らないから今の会社にいる」のと、「他を知ったうえで今の会社を選んでいる」のでは意味が違います。
自分の価値を知ることは、会社を辞める準備ではありません。
これからの働き方を自分自身で選べるようにするための準備です。
転職する気がなくても、一度自分の経験や技術を棚卸ししてみる。
そして、自分の市場価値を知っておく。
それがこれからの職人にとって、自分のキャリアと収入を守り、さらに価値を高めていくための第一歩になるのではないでしょうか。
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