特集建設業の人手不足はこれからさらに深刻になるのか 2026.09.28

「求人を出しても人が来ない」

「若い職人がなかなか入ってこない」

「ベテランはいるけれど、あと10年したらどうなるのか」

建設会社の経営者であれば、一度はこうした不安を感じたことがあるのではないでしょうか。

建設業界では長年「人手不足」が叫ばれてきました。

しかし、本当に問題なのは「今、人が足りない」ということだけではありません。

むしろ考えなければならないのは、5年後、10年後に施工を担う職人を確保できるのかという問題です。

結論から言えば、現在の年齢構成や将来推計を見る限り、建設業の人材確保は今後さらに難しくなる可能性があります。

国土交通省によると、建設技能者のうち60歳以上が約4分の1を占める一方、29歳以下は約12%です。つまり、これから引退していく層に対して、それを支える若手が十分に厚くない構造になっています。

 

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問題は「人が少ない」だけではない

 

建設業の人手不足を考えるとき、単純な人数だけを見てはいけません。

重要なのが「年齢構成」です。

2024年の建設業就業者では、55歳以上が36.7%を占める一方、29歳以下は11.7%。全産業では55歳以上が32.4%、29歳以下が16.9%ですから、建設業は他産業と比較しても高齢化が進んでいます。

つまり現在は、長年業界を支えてきたベテラン層によって現場が成り立っている部分が大きいのです。

問題は、この世代が今後10年、20年と働き続けるわけではないことです。

60代の職人が引退する。

しかし20代の職人が同じ人数だけ入ってこない。

この状態が続けば、建設業界全体の技能者数は徐々に減っていきます。

実際、国土交通白書で紹介されている将来推計では、建設技能労働者数は2020年以降、おおむね5年ごとに約7~8%ずつ減少するとされています。

これは一時的な「採用難」ではなく、業界構造そのものの問題なのです。

 

求人を出す会社は多い。しかし働く人は限られている

 

採用市場にも、その状況は表れています。

厚生労働省の第十一次建設雇用改善計画によると、2024年度の職業別有効求人倍率は、全産業が1.25倍だったのに対して、電気工事従事者3.30倍、建設躯体工事以外の建設従事者4.59倍、土木作業従事者6.10倍、建設躯体工事従事者では8.56倍となっています。

職種によって差はありますが、「仕事を探している人より、人を探している企業の方が圧倒的に多い」状態にある職種が少なくありません。

ここで建設会社が考えなければならないのは、

「求人を出せば、そのうち誰か来るだろう」

という採用方法が今後も通用するのかということです。

人材という限られた資源を、多くの企業が取り合う。

そうなれば当然、採用競争は激しくなります。

 

若者が入ってこなければ技術も失われる

 

さらに深刻なのが、技能継承です。

建設業は、マニュアルを読めばすぐに一人前になれる仕事ではありません。

現場を経験し、先輩の仕事を見て、失敗を重ねながら技術を身につけていきます。

一人前になるまで数年、職長として現場を任せられるようになるまでには、さらに長い経験が必要な職種もあります。

つまり、

「ベテランが辞めてから若手を採用すればいい」

では遅いのです。

60代の職人が持っている技術を30代、40代へ。

30代、40代が持っている技術を20代へ。

この循環を今からつくっておかなければ、人数だけでなく会社の技術そのものが失われる可能性があります。

人材採用は単なる欠員補充ではありません。

会社を10年後、20年後へ残すための「技術継承」でもあるのです。

 

仕事がなくなるより「施工できない」が問題になる?

 

一方で、建設そのものの必要性がなくなるわけではありません。

建物の新築だけではなく、道路、橋梁、上下水道、電気設備など既存インフラの維持・更新も必要です。

住宅やビルも、建てれば終わりではありません。

改修、修繕、設備更新などの仕事が発生します。

つまり今後、会社によっては、

「仕事がない」

ことより、

「仕事はあるのに施工する人がいない」

ことの方が大きな経営課題になる可能性があります。

そうなれば、これまで以上に「職人を確保できる会社」が強くなります。

営業力がある。

受注力がある。

技術力がある。

それらに加えて、

「人を採用し、育て、定着させられる力」

そのものが会社の競争力になっていくでしょう。

 

外国人材や省人化だけで解決できるのか

 

もちろん、対策も進んでいます。

外国人材の活用、ICT施工、建設DX、プレハブ化、ロボット、省人化技術など、少ない人数でも施工できる環境づくりは今後さらに進んでいくでしょう。

実際、建設分野の外国人材は2025年に20.6万人となり、2019年の9.3万人から約2倍に増えています。

これは人手不足を補う重要な手段です。

しかし、それだけですべての問題が解決するわけではありません。

現場をまとめる人。

技術を教える人。

安全を管理する人。

施工品質を判断する人。

顧客や元請けと調整する人。

こうした役割には、現場経験を持つ人材が引き続き必要です。

だからこそ、「人を減らすための技術」と「人を育てる仕組み」の両方が必要なのです。

 

これからは「採用できる会社」と「できない会社」の差が広がる

 

今後、人手不足が進んだとき、すべての建設会社が同じように困るとは限りません。

若手を継続的に採用している会社。

給与や休日を改善している会社。

職人の技術を正当に評価している会社。

教育制度を整えている会社。

SNSやホームページで会社の魅力を発信している会社。

経験者や潜在転職層へ積極的にアプローチしている会社。

こうした企業には人材が集まりやすくなるでしょう。

一方、

「昔からこの条件だから」

「求人を出しておけばそのうち来る」

「職人は見て覚えるもの」

という考え方を変えない会社は、採用で苦戦する可能性があります。

つまりこれから起こるのは、単純な「業界全体の人手不足」だけではありません。

人材を確保できる会社と、できない会社の二極化も進んでいく可能性があります。

 

採用を「人が辞めてから始める」では遅い

 

ここで経営者に考えてほしいことがあります。

現在50代、60代の職人が、10年後に何人残っていますか。

その人たちが持っている技術を引き継げる30代、40代はいますか。

さらにその下の20代は育っていますか。

もし、

「今は現場が回っているから大丈夫」

という状態でも、年齢構成を並べてみると、5年後、10年後に突然人材不足が表面化する可能性があります。

だからこそ採用は、

欠員が出てから始めるものではなく、常に続けるもの

へ変えていく必要があります。

求人サイト、ホームページ、SNS、社員紹介、スカウト、学校との接点など、複数の採用経路を持つ。

そして採用した人材を育て、辞めない会社をつくる。

採用と定着をセットで考えることが重要です。

 

人手不足は「採用問題」ではなく「経営問題」へ

 

建設業の人手不足はこれからさらに深刻になるのか。

短期的には需給が緩む月や職種もあります。実際、2026年6月の国土交通省調査では全国8職種の過不足率は1.0%の不足で、前月より不足幅は縮小しています。

しかし、中長期で見れば話は別です。

高齢化。
若年層の少なさ。
ベテランの大量引退。
技能者数の減少。

こうした構造を考えれば、「そのうち自然に人が増える」と期待するのは難しいでしょう。

だからこそ、これからの建設会社に必要なのは、

「人がいなくなったら求人を出す」

という考え方から、

「人材を確保すること自体を経営戦略にする」

という発想への転換です。

5年後、10年後に仕事を取れる会社ではなく、

その仕事を施工できる人材を持っている会社であること。

人手不足が深刻になるほど、その価値は大きくなります。

建設業の採用は、もはや単なる求人担当者だけの仕事ではありません。

会社の未来を左右する、経営そのものの課題になりつつあるのではないでしょうか。

 

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