
建設業の求人票を見ていると、
「月給30万円~」
「経験者 月給35万円~」
といった表記をよく見かけます。
もちろん、給与額を書くことは重要です。
求職者にとって「いくらもらえるのか」は、会社を選ぶうえで大切な判断材料だからです。
しかし、これからの建設業採用では、「月給○万円~」だけでは十分ではありません。
なぜなら求職者が本当に知りたいのは、現在の給与だけではないからです。
「自分ならいくらからスタートするのか」
「何ができれば給料が上がるのか」
「3年後、5年後にはどれくらい稼げるのか」
そこまで分からなければ、自分がその会社で働く未来をイメージできません。
今回は、なぜ求人票に「月給○万円~」だけを書いてはいけないのかを考えてみます。
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「~」の先が分からない
例えば、
「経験者 月給30万円~50万円」
という求人があったとします。
一見すると悪くない条件です。
しかし、求職者からすると疑問が残ります。
「自分は30万円なのか、40万円なのか?」
「50万円をもらえるのはどんな人?」
「経験10年ならいくら?」
「資格を持っていたら上がる?」
企業側には給与を決める基準があったとしても、それが求人票に書かれていなければ求職者には分かりません。
場合によっては、
「50万円と書いているけど、結局ほとんどの人は30万円なんじゃないの?」
と疑われてしまうことすらあります。
給与レンジを広く設定するのであれば、その幅に「理由」を持たせることが大切です。
職人は経験年数だけでは判断できない
建設業では、
「経験者優遇」
という言葉もよく使われます。
しかし、経験者といっても能力はさまざまです。
経験3年でも、一人でかなりの作業ができる人もいます。
反対に経験10年でも、経験してきた工事の種類によっては、自社で求める仕事をすぐに任せられない場合もあります。
資格がある。
図面が読める。
一人で施工できる。
段取りができる。
職長として現場をまとめられる。
元請けと打ち合わせできる。
後輩を指導できる。
同じ「経験者」でも、できることによって会社への貢献度は変わります。
だからこそ給与も、
「何年経験したか」だけではなく、「何ができるのか」
とセットで見せる必要があります。
「あなたなら○万円」がイメージできる求人へ
例えば単純に、
「経験者 月給30万円~50万円」
と書くのではなく、
「経験1~3年程度/月給30万円~」
「一人で施工できる方/月給35万円~」
「職長経験者/月給40万円~」
「現場管理・後輩指導までできる方/月給45万円以上も可能」
など、具体的なモデルを示してみる。
もちろん実際の給与制度に合わせて設定する必要がありますが、こうすることで求職者は、
「自分ならこの辺りかな」
と想像できます。
特に腕に自信のある経験者にとって、これは重要です。
単に「経験者優遇」と書かれている求人より、
「あなたの経験を、こう評価します」
と書かれている求人の方が、自分のスキルを見てもらえそうだと感じるからです。
求職者が見ているのは「入社時」だけではない
もう一つ重要なのが、入社後の給与です。
例えば現在、別の会社で月給35万円をもらっている職人がいたとします。
転職先も月給35万円。
これだけなら、
「わざわざ会社を変える必要はないな」
と思うかもしれません。
しかし、
「入社時35万円。職長になれば40万円以上」
「資格取得で毎月○万円の資格手当」
「現場を任せられるようになれば昇給」
など、将来の給与が見えれば話は変わります。
求職者が比較しているのは、
「今の会社の給料」と「転職先の初任給」だけではありません。
「この会社に入ったら、自分の給料はこれからどうなるのか」
という未来も比較しています。
だからこそ求人では、「現在いくら払うか」と同時に、「どうすれば給与が上がるのか」を伝えることが重要です。
「頑張れば昇給」では弱い
そこでよく使われるのが、
「頑張り次第で随時昇給!」
という表現です。
悪い言葉ではありません。
しかし、求職者からすれば、
「何を頑張ればいいの?」
という疑問が残ります。
資格なのか。
施工スピードなのか。
技術力なのか。
現場を任せられることなのか。
職長になることなのか。
会社によって評価基準は違います。
だからこそ、
「○○の資格取得で資格手当」
「一人で現場を任せられるようになれば昇給」
「職長昇格時に給与見直し」
など、できるだけ具体的にした方が伝わります。
大切なのは、努力と給与の関係を見えるようにすることです。
給与だけでなく「年収」で見せる
建設業では、月給だけでは実際の収入が分かりにくい場合もあります。
賞与。
資格手当。
職長手当。
残業手当。
休日出勤手当。
出張手当。
こうしたものがあるからです。
例えば、
「月給35万円」
だけではなく、
「入社3年目・○歳・年収480万円」
「職長・○歳・年収550万円」
といった実際の年収例を掲載する方法もあります。
求職者にとって重要なのは、月給の数字そのものではなく、その会社で働いた結果、年間でどれくらいの収入になるのかです。
実在する社員のモデルケースを、個人が特定されない形で紹介するのも有効でしょう。
給与の見える化は「評価の見える化」でもある
給与を具体的に説明しようとすると、会社側にも一つの変化が起こります。
「そもそも、うちは何を基準に給料を決めているんだ?」
という問題に気づくからです。
経験年数なのか。
資格なのか。
施工技術なのか。
職長能力なのか。
教育力なのか。
売上への貢献なのか。
ここが整理されていなければ、求人票でも説明できません。
つまり給与を見える化することは、そのまま職人の評価基準を見える化することにもつながります。
これは採用だけではなく、現在働いている社員の定着にも関係します。
「何ができれば評価が上がるのか」が分かれば、職人自身も次の目標を持ちやすくなるからです。
高い給料を書くことが採用力ではない
採用競争が激しくなると、
「他社より高い給料を書かなければ」
と考えがちです。
もちろん給与水準そのものも重要です。
しかし、すべての会社が給与額だけで競争すれば、資金力のある会社が有利になります。
中小の建設会社が考えるべきなのは、
「いくら払うか」だけではなく、「どう評価する会社なのか」を伝えること。
資格を取ったら評価する。
技術が上がったら評価する。
現場を任せられるようになったら評価する。
後輩を育てられるようになったら評価する。
こうした仕組みが見える会社であれば、
「ここなら頑張った分だけ評価してもらえそうだ」
という魅力をつくることができます。
「月給○万円~」の、その先を伝えよう
これからの建設業採用では、給与額を掲載するだけでは他社との差別化が難しくなっていきます。
大切なのは、
「入社時はいくらなのか」
「自分の経験ならいくらなのか」
「何ができれば給与が上がるのか」
「3年後、5年後にどれくらいを目指せるのか」
まで伝えることです。
求人票に書かれた、
「月給30万円~」
という一行。
その「~」の先に、職人の未来が見えるでしょうか。
求職者が知りたいのは、単なる金額ではありません。
「自分の技術や成長を、この会社はどう評価してくれるのか」
です。
これから採用に強い建設会社になるためには、給与を高く見せること以上に、給与の「理由」と「未来」を見せることが重要になっていくのではないでしょうか。
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