
──一つの技術では生き残れない時代の“新しい職人像”──
建設業界では今、
“多能工(マルチスキルワーカー)”の価値が急上昇しています。
かつては
「専門を極めるほうが良い」
「何でも屋は器用貧乏になる」
といった考え方もありましたが、
今の市場ではその常識が完全に逆転しました。
結論から言えば、
多能工は最も“稼げる職人”になりやすい。
その理由は、
現場の変化・人手不足・工期短縮・DX化など
複数の構造が同時に進んでいるためです。
本コラムでは、
多能工がなぜ稼げるのか、そしてどのように育てるべきかを
わかりやすく解説します。
1. 多能工は“現場の付加価値”を上げられる存在だから
建設現場の最大の課題は
“待ち時間”と“段取り待ち”。
職人の人数が足りない今、
専門職が来るまで作業が止まるケースが頻発しています。
しかし、多能工がいる現場では──
●次の工程を自分で進められる
●他職種とのつなぎを円滑にできる
●小さな仕事をその場で片付けられる
●現場監督の負担が減る
つまり、多能工は
現場全体の生産性を押し上げる存在
なのです。
これは会社にとっては
“高単価で仕事を任せやすい職人”
であるということ。
結果として、
多能工は稼げる存在になります。
2. 人手不足の時代、多能工は“仕事が切れない”
専門職だけの職人は、
工事内容や配管・電気・ボードなどの順番によって
仕事が“ある時期・ない時期”の差が出やすい。
しかし、多能工の場合──
・解体
・雑工事
・ボード補助
・軽天補助
・設備や電気の簡易作業
・仕上げ関係のサポート
など、幅広い工程に対応できるため
常に現場で必要とされる存在になります。
つまり、
“需要が途切れない=収入も途切れない”
という構造が成立するのです。
3. 多能工は単価を上げやすい
単価が上がる理由は以下の通り。
① 現場が評価しやすい(監督からの指名が増える)
「彼がいれば現場が早く進む」
と分かると元請けは指名します。
② 会社からの評価も上がる(給与アップにつながる)
育成コストが低く、現場での活躍範囲が広い。
③ 元請けへの請求単価を高めやすい
“雑工+軽天補助”など複数工程を担えるため
会社側も高単価で見積もれる。
④ 独立しても仕事を選べる
“多能工を1人置けば現場が回る”
と言われるほど価値が高いため
独立後の単価も上げやすい。
つまり、多能工は
稼げる要素が重なりやすい職人像
と言えます。
4. 多能工をどう育てる?成功企業の“育成ステップ”
多能化を進める会社には
共通する育成パターンがあります。
以下の3段階で育てるのが最も効果的です。
【STEP1:1つの軸スキルを確実に身につけさせる】
まずは専門軸を1つ定めます。
例:軽天/ボード/内装/電気/設備 など。
軸がないまま多能化を進めると
「何もできない多能工」になる危険があります。
【STEP2:周辺業務から広げていく】
例えば軽天職の軸があるとしたら…
・ボード貼りの補助
・仕上げのサポート
・雑工事
・簡単な墨出し
・小さな補修作業
このように
“軸に近い作業”から習得 させます。
ここで重要なのは、
「全部やれ」ではなく
「まずは1つできればOK」
とすること。
成功体験を積ませると、
自然と技術が広がっていきます。
【STEP3:工程全体を理解させていく】
最終的には、
現場の流れ全体を理解する多能工に育てます。
そのために必要なのは、
・現場監督と同じ視点で考える練習
・工程表の読み方
・作業順序のロジック
・他職種との関係性
・段取り力
多能工の真の価値は
“手を動かす量”ではなく
“現場全体を動かす力”です。
ここまで育てば、
会社にとっても独立しても
圧倒的な収入を得られる技術者になります。
5. 多能工を育てる会社には“共通する文化”がある
多能工育成がうまくいっている会社は
技術だけでなく“文化”も整っています。
共通点は以下の3つ。
① 失敗を許容する雰囲気がある
多能工は挑戦の連続。
失敗を責める会社では育ちません。
② 教え方が体系化されている
属人的ではなく
“誰が教えても同じ品質”になる仕組みがある。
③ 他職種と仲が良い
多能工はコミュニケーション力が重要。
声かけ文化がある会社ほど育つ。
6. 結論:多能工はこれからの時代の“最も価値が高い職人”
多能工が稼げる理由をまとめると…
【多能工が稼げる理由】
✔ 現場の生産性を上げられる
✔ 需要が途切れない
✔ 元請けから指名されやすい
✔ 会社からの評価が高い
✔ 単価を上げやすい
✔ 独立後も仕事に困らない
そして、多能工育成で最も重要なのは…
“軸の技術を固め、周辺スキルを広げ、現場全体を理解させる”
という育成ステップです。
多能工はもはや
「便利屋」でも「なんでも屋」でもありません。
現場を回し、未来をつくる“価値ある技術者”。
会社が多能工を育てられるかどうかは、
今後の生産性・採用力・競争力を左右する
極めて重要なテーマになっていくでしょう。

