
──“人手不足の特効薬”ではなく“延命措置”でしかない理由──
建設業界は長年、人材不足を補うために
外国人技能実習生や特定技能といった
海外人材に大きく依存してきました。
・若者の日本離れ
・アジア諸国の経済成長
・国際的な人材獲得競争
・技能実習制度の見直し
これらの要因が重なる中で、
外国人材依存は今後ますます大きな課題となります。
結論から言えば、
外国人材に頼る採用は、今後ますます難しくなる。
そして“依存し続ける会社”は生き残れない。
この“限界”を理解していない会社は、
近い将来採用が完全に詰まります。
本コラムでは、
なぜ日本の建設業は外国人材に頼らざるを得なかったのか、
そしてそのモデルがこれから限界を迎えるのかを
深掘りしていきます。
1. なぜ建設業は外国人材に依存するようになったのか
背景には、明確な“国内要因”があります。
●日本人若手が建設業を敬遠
●長期的な賃金停滞
●3K(きつい・汚い・危険)のイメージ
●採用ブランディングの弱さ
●技術継承の遅れ
これらにより、
国内の若手人材の流入が急減。
一方で、
●インフラ老朽化
●再開発
●災害復旧
●国家プロジェクト
など、
建設需要は継続しています。
需要>供給の構造が続く中で、
“穴埋め”として外国人材を受け入れるモデルが
当たり前になっていきました。
2. 外国人材依存の構造が抱える3つの問題
外国人材が建設現場を支えてきたのは事実ですが、
同時に大きな限界も抱えています。
① 国際競争で“日本が選ばれなくなる”
かつては
「日本で働けば稼げる」
というイメージが強く、多くの外国人が来日しました。
しかし現在の状況は大きく違います。
・東南アジア諸国の賃金が上昇
・他国(韓国・台湾・シンガポール)も積極採用
・日本は円安で実質賃金が低下
・少子化でアジアの若者自体が少なくなる
つまり、
“日本で働く魅力”が相対的に低下している。
事実、フィリピン・ベトナムでは
「日本より欧州が稼げる」という空気が強まっています。
今後、日本に優秀な外国人材が
来なくなる未来は十分にあり得ます。
② 技能実習制度の変革が進み “安定供給”が難しくなる
技能実習制度は
「問題の多い制度」として国内外から批判を受けており、
政府も抜本的な見直しを進めています。
制度が変わると、
・受け入れ条件の厳格化
・在留期間の短縮・延長の不透明化
・送り出し国との調整難化
・コスト上昇
などが起きる可能性が高い。
つまり、
外国人材が“当たり前に来る時代”は終わる のです。
③ 外国人材の“質の差”が拡大していく
需要が高まり競争が激しくなると、
当然ながら優秀な人材は他国へ流れます。
日本に来る層が
・未経験
・日本語が苦手
・長期滞在の意欲が低い
など、
“質のばらつき”が大きくなりやすい。
依存している会社ほど、
一番影響を受けることになります。
3. 外国人材依存の未来予測:これから何が起きるのか?
では、このまま外国人材依存が続くと
建設業界はどうなるのか。
① 人材確保競争が激化し、費用が跳ね上がる
人材の奪い合いが進むため、
送り出し機関への費用も増え、
受け入れコストは確実に上昇します。
② “確保できる会社”と “確保できない会社” が分かれる
外国人材でさえ
会社を選ぶ時代に突入します。
魅力のない会社には来ません。
③ 依存企業は“人材ショック”に直撃する
制度変更や送り出し国の状況変化が起きた瞬間、
依存度の高い会社は即ダメージを受けます。
④ 国内人材の取り合いが加速する
外国人材が確保しづらいほど、
日本人若手の価値は急上昇します。
結果、
採用ブランディングが弱い会社は完全に不利になる。
4. 外国人材は“必要”。しかし“依存”してはいけない理由
ここまで読んでいただくと
誤解されそうですが、私は
外国人材を否定しているわけではありません。
実際、
・動きがいい
・勤勉
・明るい
・吸収が早い
など、現場で欠かせない存在です。
重要なのは、
外国人材は“チームの一部”であって、“依存先”ではないということ。
今後の人口構造を考えると、
外国人材は引き続き重要ですが、
外国人“だけ”に頼る採用モデルには未来がない。
これが核心です。
5. 外国人材依存から脱却するために、企業が今すべき3つの戦略
では、この構造的な問題に
企業はどう対応すべきなのか?
① 国内若手へのアプローチ強化(採用ブランドづくり)
若手が来ない理由は
“建設業界が魅力的に見えていない”から。
・SNS発信
・現場の見える化
・採用サイト整備
・写真・動画の強化
・キャリアステップの明確化
これらは今や必須。
② 外国人材を“戦力化できる”教育体制をつくる
外国人材を受け入れても
育てられなければ戦力になりません。
・教育マニュアル
・日本語のサポート
・役割分担の明確化
・現場でのフォロー体制
これらを整える会社は
外国人材のパフォーマンスを最大化できます。
③ 依存ではなく“多様化”された採用戦略へ
国内若手、外国人材、経験者、中途採用、パートナー企業など
採用のポートフォリオを広げること です。
一つの採用チャネルに依存するほど
企業は脆弱になります。
6. 結論:外国人材依存は“延命措置”。本当の解決策は会社の魅力づくり
外国人材は、
人手不足における重要な存在ですが、
根本解決にはならない。
本当の解決策は、
✔ 国内若手が入りたくなる会社づくり
✔ 外国人材が定着する育成環境
✔ 多様な人材が活躍できる組織設計
つまり、
“選ばれる会社になること” に尽きます。
人口減少が加速するこれからの時代、
外国人材依存はますます限界を迎えます。
その前に、
会社としてどう備えるかが
未来を大きく左右していくのです。

