
「職人の給料って、これから上がるんですか?」
建設業で働いている人なら、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
物価は上がる。生活費も上がる。それなのに給料が変わらなければ、実際の生活は苦しくなってしまいます。
一方、建設業界では以前から深刻な人手不足が続いています。
普通に考えれば、人が足りないのであれば職人の価値は上がり、それに伴って給料も上がっていきそうです。
では、本当にこれから職人の給料は上がるのでしょうか。
結論から言えば、職人の待遇を引き上げようとする流れは、今後さらに強くなる可能性があります。
ただし、「建設業で働いていれば、全員の給料が同じように上がる」という単純な話でもありません。
これからは、職人の中でも「評価される人」と「そうでない人」の差が、これまで以上に大きくなっていく可能性があります。
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建設業界は、とにかく人が足りない
職人の給料を考えるうえで、まず避けて通れないのが人手不足です。
国土交通省と厚生労働省が公表している資料では、建設技能者のうち60歳以上が約4分の1を占める一方、29歳以下は約12%にとどまっています。
つまり、これからベテラン職人が次々と引退していく一方で、それを補うだけの若手が十分に入ってきていないということです。
建物を建てる。
道路をつくる。
電気を通す。
水道を整備する。
老朽化したインフラを修繕する。
こうした仕事そのものがなくなるわけではありません。
仕事はある。しかし、それを施工する人が足りない。
そうなれば当然、技術を持つ職人の希少価値は高まります。
これからの建設業界では、「仕事を取ってくる力」だけではなく、「施工できる人を確保していること」そのものが会社の競争力になる可能性があります。
国も「職人の処遇改善」を進めている
もう一つ大きな変化があります。
国も建設業の担い手不足を重要な問題として捉え、賃金を含めた処遇改善を進めています。
国土交通白書でも、若者の入職・定着を促進するためには賃上げや労働環境の改善が必要であり、建設業を従来の3Kから、「給与がよく、休暇が取れ、希望が持てる」産業へ変えていく必要性が示されています。
さらに改正建設業法を軸に、適正な労務費を確保し、それを技能者の処遇改善につなげていく仕組みづくりも進められています。
つまり、
「職人の給料を上げなければ若者が入ってこない」
「若者が入ってこなければ建設業そのものが維持できない」
という危機感が、業界全体で強くなっているのです。
だからといって全員の給料が上がるとは限らない
ここで注意したいことがあります。
人手不足だからといって、すべての職人の給与が自動的に上がるとは限りません。
なぜなら、会社によって経営状況も違えば、利益率も違うからです。
同じ職種でも、
どんな工事をしているのか。
元請けなのか下請けなのか。
どのくらいの単価で仕事を受注しているのか。
どのような取引先を持っているのか。
社員をどのように評価しているのか。
によって、職人へ還元できる金額は変わります。
さらに今後は、職人自身の「できること」によっても給与差が広がっていく可能性があります。
これから価値が上がるのは「何でも任せられる職人」
例えば、同じ経験10年の職人が2人いたとします。
一人は、指示された作業を確実に施工できる。
もう一人は、施工だけでなく図面を読み、段取りを組み、材料を手配し、後輩へ指示を出し、元請けとの打ち合わせまでできる。
会社から見れば、どちらも必要な人材です。
しかし、人手不足が深刻になればなるほど、後者のような「任せられる範囲が広い職人」の価値は高くなります。
資格を持っている。
職長ができる。
若手を育成できる。
他業種と調整できる。
安全管理ができる。
顧客対応ができる。
こうした能力も含めて評価される時代になっていくでしょう。
つまりこれからは、
「職人だから給料が上がる」のではなく、「価値の高い職人ほど給料が上がる」
という方向へ進んでいく可能性があります。
若手職人には大きなチャンスがある
特に大きなチャンスがあるのが、20代・30代の若手職人です。
若いというだけで高く評価されるという意味ではありません。
若いうちから技術を身につけ、資格を取得し、現場経験を積み重ねれば、10年後、20年後には業界内で非常に貴重な人材になる可能性があるということです。
現在のベテラン層が引退していく中で、
「現場を任せられる30代・40代」
は、今以上に必要とされるでしょう。
だからこそ、若いうちに、
「給料はいくらか」
だけを見るのではなく、
「この会社でどんな技術を身につけられるか」
という視点を持つことも大切です。
5年後、10年後の給与を決めるのは、今身につけている技術かもしれません。
自分の価値を知ることも重要になる
そして、これから職人にとって重要になるのが「自分の市場価値を知ること」です。
どんな資格を持っているのか。
どんな工事を経験してきたのか。
何を一人で施工できるのか。
職長経験はあるのか。
現場をどこまで任せてもらえるのか。
こうした情報を整理すると、自分が会社にどれだけの価値を提供できるのかが見えてきます。
ところが、職人の世界では自分の価値を知らないまま働いている人も少なくありません。
「うちの会社ではこの給料だから」
という理由だけで、自分の価値を決めてしまう。
しかし人手不足が進めば、同じ技術でも会社によって評価が大きく変わる可能性があります。
だからこそ、転職する・しないにかかわらず、自分の技術が世の中でどれくらい必要とされているのかを知っておくことは大切です。
「会社に給料を上げてもらう」だけではない
これまで給料というと、
「会社が上げてくれるもの」
という感覚が強かったかもしれません。
しかしこれからは、自分自身で価値を高めるという考え方も必要になります。
資格を取る。
できる仕事を増やす。
職長を経験する。
後輩を育てられるようになる。
新しい工法を覚える。
自分のスキルをきちんと説明できるようにする。
そして、その価値を正当に評価してくれる会社を知る。
そうすることで、職人自身が自分の給与を上げるための選択肢を持てるようになります。
職人の価値が見直される時代へ
建設業界はこれから大きく変わっていきます。
人手不足、高齢化、働き方改革、処遇改善、生産性向上。
さまざまな変化が同時に進んでいます。
その中で一つ確かなことがあります。
建設の仕事は、最後は誰かが現場で施工しなければ完成しないということです。
どれだけデジタル化が進んでも、建物を建て、設備を取り付け、道路をつくり、インフラを守るためには現場の技術が必要です。
だからこそ、その技術を持つ職人の価値は、これから改めて見直されていく可能性があります。
ただ待っていれば給料が上がるとは限りません。
大切なのは、
自分の技術を磨き、自分の価値を知り、その価値を正当に評価してくれる環境を選べる職人になること。
これから職人の給料は上がるのか。
その答えは、業界全体としては「上げていかなければならない方向に進んでいる」と言えるでしょう。
そして、その流れの中でより大きなチャンスをつかむのは、自分の「できること」を増やし、その価値を理解している職人なのではないでしょうか。
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